L.A.のアイコンに迫る:フォーモッサ・カフェ

Main Room of the Formosa Cafe at night
Main room of the Formosa Cafe | Photo: Maxim Shapovalov

今年、80周年を迎えたロサンゼルスのランドマーク、Formosa Cafe(フォーモッサ・カフェ)が、240万ドルの改装を終えて、6月28日にリニューアル・オープンしました。今回は、ハリウッド黄金時代を語る上で欠かせない、L.A.のアイコン、フォーモッサ・カフェをご紹介いたします!

 

今回フォーモッサ・カフェを新しく運営する事になった 1933 Group は、Highland Park Bowl やIdle Hour など、超有名プロジェクトの修復作業に関わり、幅広く賞賛されています。1933 Group の共同オーナー兼リード・デザイナーである、Bobby Green氏 は、かつてのハリウッド黄金時代の全盛期の頃の Formosa Cafe を取り戻すために、ロサンゼルスの歴史家でありながら、幅広いエンターテインメント業界関係者でもあったフォーモッサ・カフェの元オーナー家族と密に協力して今回の改修に挑みました。

Vintage photo of the Formosa Cafe interior
Vintage photo of the Formosa Cafe | Photo: 1933 Group

ウェスト・ハリウッド市によって市の文化財に指定されているフォーモッサ・カフェは、立地に大変恵まれており、すぐ側に、1919年に設立されたピックフォード・フェアバンクス・撮影スタジオがありました。(後にユナイテッド・アーティスト・スタジオになり、その後ワーナー・ハリウッド・スタジオ売却後、1999年以降、現在ではザ・ロットに名前を変えています。 )

 

当時のアイコン的存在、フランク・シナトラ、マリリン・モンロー、ハンフリー・ボガート、ジェームズ・ディーン、そしてエルビス・プレスリーらがフォーモッサに立ち寄っていた事から、ハリウッドで最も悪名高く、長く続いているセレブ達のたまり場として世間に知られるようになりました。

 

改修事業を担当した1993 Group の Green氏は、「今回の改修に携われたことは本当に最高な出来事で、誰もが注目すべき歴史的施設である、フォーモッサ・カフェを復活できた事を嬉しく思います。また、古いハリウッドの歴史を新しく塗り替える機会を与えられたことを光栄に思います。多くのセレブに愛され、彼らのお気に入りの場所だった Formosa Cafe の改修は、最もエキサイティングで、歴史的なウェスト・ハリウッドにこれからもずっと影響を与えることを願っています。」と述べています。

The main bar of the Formosa Cafe at night
Main bar of the Formosa Cafe | Photo by Maxim Shapovalov

フォーモッサ・カフェはその存在自体がスター的存在です。映画「L.A.コンフィデンシャル(1997)」での記憶に残るシーンでは、フォーモッサのセットで、エド・エクスリー(ガイ・ピアース)は女優のラナ・ターナー(ブレンダ・バーキ)を売春婦であると間違えて非難します。他にも映画「スウィンガーズ(1996)」にも登場し、最近では、BOSCH/ボッシュのシーズン3「悲しき血痕」の回にも登場しています。

Formosa Cafe custom wallpaper designed by Bobby Green
The Formosa's custom wallpaper was designed by Bobby Green | Photo by Maxim Shapovalov

古くからの常連客であれば、昔ながらのデザインがそのまま活かされた、メイン・バーに並ぶ何十もの著名人の白黒写真や、ガラスのケースに入ったエルヴィス・プレスリーの陶器人形などにもすぐ気がつく事でしょう。

 

リニューアルの一環として、天井には立体的な中国風模様が装飾され、Green氏がデザインした新しいカスタム壁紙が、1920年代当初から店内を装飾していた何重にも重なる歴史ある壁紙の上に施されました。

 

他にも、ナプキンや、龍の形をしたマドラー、マッチ箱、そして、1940年代に店内で使用されていたアイテムからインスピレーションを受けたグラスなどのデザインなどにも今回の改装の一筆が加えられています。

Formosa Cafe main bar floor with terrazzo tiles
Main bar floor with terrazzo tiles and Chinese knot pattern | Photo by Maxim Shapovalov

メイン・バー・エリアには、ハリウッド大通りやウォーク・オブ・フェイムでも使用されているテラゾー・タイルが使用されました。今回の設置には、長年に渡ってハリウッド大通りにテラゾー・タイルを敷設してきた業者が担当しました。床には、中国風の結び目模様を意識した、中心から四方八方へ伸びる形をした真鍮の枠組みがはめられており、店内の一部にはオリジナルの書体で「Formosa」の文字が綴られています。

Bugsy Siegel's floor safe at the Formosa Cafe
Bugsy Siegel's safe is embedded in the floor of the Formosa Cafe | Photo by Maxim Shapovalov

フロント・バーに沿いに並ぶ、赤いビニールがはられたブースは、全て元の店内と同様に光沢のあるスタイルに復元されました。各ブースにはかつての常連客であったエヴァ・ガードナー、ベンジャミン・シーゲル、ラナ・ターナー、ジョン・ウェインやエルビス・プレスリーにちなんで名前が付けられています。ベンジャミン・シーゲルの埋設型金庫は、今でも彼のお気に入りのテーブルの下に埋め込まれており、照明があてられて、バーを訪れる方に公開されています。

Interior of the Pacific Electric Red Car trolley at the Formosa Cafe
Interior of the Pacific Electric Red Car trolley at the Formosa Cafe | Photo by Maxim Shapovalov

メイン・バーの後ろには、完全に復元された1904年製のパシフィック電鉄のレッド・カー・トロリーがあります。こちらは現存する中で最古のレッド・カーだと言われています。メイン・バーと同様に、こちらもトロリーの2人席と4人席上に著名人の写真が並びます。

 

レッド・カーの後ろにはプライベート・VIPルームがあり、20人のゲストを収容する事ができます。ミッキー・コーエンが、専用の入り口があるこの裏部屋からギャンブル仲間達を呼び出していたと伝えられています。Green氏はオマージュとして、ビンテージのダイヤル式電話を設置し、そこからゲストが飲み物の注文する事ができるようにし、注文されたメニューは隠された秘密の窓から配達される仕組みになっています。

The Yee Mee Loo bar at Formosa Cafe
Yee Mee Loo at the Formosa Cafe | Photo by Maxim Shapovalov

チャイナタウンの Yee Mee Loo レストラン・バーにちなんで名付けられた、新しく設置された奥の部屋は(以前は喫煙者のためのパティオとして使用されていました)Green氏の今回の復元に対するクリエイティビティと心のこもったアプローチの典型として現れました。こちらのハイライトは、Yee Me Loo ラウンジ(別名「Kwan Yin Temple」)にあった華やかなカウンターです。 Yee Mee Loo が1989年にクローズしてから10年後、このカウンターはグレンデールの Cinnabar に設置されました。その後、維持が難しくなり、2018年9月、Green氏によって買い取られることになりました。 Yee Mee Loo バーを覆うパゴダ風の屋根のタイルは、ワーナー・ブラザーズ・デザイン・スタジオから調達されたものです。

"Hollywood Chinese at the Formosa" exhibit curated by Arthur Dong
"Hollywood Chinese at the Formosa" exhibit curated by Arthur Dong | Photo by Maxim Shapovalov

Yee Mee Loo にも著名人の白黒写真が展示されていますが、大きな相違点としては、この天井梁に展示される60枚の写真は、1917年にアジア系アメリカ人として最初の長編映画を監督したマリオン・ウォンから始まり、先駆的なアジア系アメリカ人の映画、テレビ、舞台、ラジオ出演者のタイムラインをたどっています。オスカー®にノミネートされた映画監督でもあり、「Forbidden City, USA: Chinatown Nightclubs 1936-1970」と、最新作の「Hollywood Chinese: The Chinese in American Feature Films」の著者でもあるArthur Dong 氏によって、こちらのタイムラインが作成されました。

 

Dong氏の最新作は、アメリカ映画においての中国人の描写をテーマにした映画記念品コレクションから当時の写真や映画館内用宣伝ポスターなどを展示をする Hollywood Chinese at the Formosa 展にもインスピレーションを与えました。Yee Mee Loo の至る所で、Dong氏のコレクション、西洋人、犯罪ドラマ、ミュージカルなどのテーマで編成されたグッズを見ることができます。Green氏は「フォーモッサ・カフェは多くの点において、ハリウッドらしい中国であると言える、そのため、ハリウッド初期の中国系アメリカ人達によって受けた影響についても伝えることにしました。」と述べています。

Formosa Cafe Yee Mee Loo cocktail
Yee Mee Loo cocktail at the Formosa Cafe  |  Photo: Daniel Djang

カクテルメニューは、ハリウッドの黄金時代とフォーモッサ・カフェ全盛期時代からインスパイアされたクラシックなメニューとトレードマークとなるメニューのミックスです。ティキにインスパイアされたセクションの中で、特に際立つメニューは、強力なカクテル Yee Mee Loo(ラム、ブルー ブルーキュラソー、パイナップル、オルゲート・シロップ、クレーム・ド・カカオ、ラム・ホワイト)でしょう。

 

ある晩、ジョン・ウェインがフォーモッサで飲んでブースで酔いつぶれていたその翌朝、キッチンでスクランブルエッグを作っているところを発見されたという伝説もあるそうです。この話を元に作られたと言われている、Duke’s All Nighter (公爵のオールナイト:テキーラ、ラムチャタ、フェア・ゴジ・リキュール、パッションフルーツ、ライム)というカクテルもあります。

Formosa Cafe dishes created by David Kuo of Little Fatty
L to R: Formosa Chicken Salad, Chow Fun, Squid Ink Xiao Long Bao, General Tso’s Cauliflower, Dan Dan Mian | Photo by Maxim Shapovalov

Little Fatty のオーナー・シェフである David Kuo氏は、フォーモッサ・カフェ全盛期時代に、台湾系アメリカ料理を現代風に取り入れたメニューを作りだしました。Dan Dan Mian や General Tso’s Cauliflower (Tso将軍のカリフラワー) などの Little Fatty のお気に入りメニューが、フォーモッサ・チキンサラダや Little Fatty の代表的なメニューであるブラック・ペッパー・ビーフにインスパイアされた、Kuo氏バージョンのビーフ&ブロッコリーなどと言った新メニューとともに提供されます。

Pacific Electric Red Car trolley and chinoiserie booth at the Formosa Cafe
Pacific Electric Red Car trolley and chinoiserie booth at the Formosa | Photo by Maxim Shapovalov

Bobby Green氏と1933 Group は、フォーモッサ・カフェの素晴らしい改修&拡張に成功しました。昔からの常連客の方も、リニュアール後初めて訪れるという方も、ハリウッド黄金時代を象徴する重要なレストランのひとつ、 フォーモッサ・カフェに是非この機会にお立ち寄りください!
 

Formosa Cafe
7156 Santa Monica Blvd, West Hollywood 90046
(323) 850-9050
www.theformosacafe.com