『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ロケ地巡りガイド・決定版(前半)
1960年代からインスパイアされた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のロケ地を発見!
1969年のロサンゼルスを舞台とした『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、脚本家・監督のクエンティン・タランティーノの9作目となります。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、人気のピークを過ぎたTV俳優のリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と彼に雇われた付き人でスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)の物語が繰り広げられます。1969年と言えば、当時のハリウッドの黄金時代だったスタジオ制度が終焉を迎え、『イージー・ライダー』や『ワイルドバンチ』のカウンターカルチャーが人気を博している年となります。
そんな中、ダルトンとブースがこの急変しているハリウッドで自身の立ち位置を追求し、実在した大御所のスティーブ・マックイーンやブルース・リー、女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)などに出会っていきます。本編では、多くのキャラクターとストーリーが交差していき、テート、ヘアスタイリストのジェイ・セブリングとその他3人がチャールズ・マンソンの信奉者に殺害され、悲惨な運命を迎えることになります。
2019年7月に公開された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、第77回ゴールデン・グローブ賞で、最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)、最優秀助演男優賞(ブラッド・ピット)と最優秀脚本賞(クエンティン・タランティーノ)の3つの賞を受賞しました。
また、第92回アカデミー賞でも、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は助演男優賞(ブラッド・ピット)と美術賞を受賞しました。
"「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は自分のロサンゼルスへのラブレター。" - クエンティン・タランティーノ
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の撮影は、2018年6月から11月までロサンゼルスで行われました。当時のインスタグラムやツイッターには、1969年の風景に戻されたハリウッド大通りがファンに撮られた写真で溢れていました。中には、一瞬しか登場しないロケ地もあれば、「Musso & Frank Grill」のように長尺で登場するロケ地もあります。
Esquire誌とのインタビューによると、タランティーノ監督は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をもっともパーソナルな映画として位置付けています。「自分の回顧録のような作品です。アルフォンソ・キュアロン監督には「ROMA/ローマ」の1970年のメキシコ・シティがあると同じように、自分には1969年のロサンゼルスがあります。それは私です。私を築き上げた年です。当時は6歳でした。それは私の世界です。そして、私のL.A.へのラブレターです。」とタランティーノ監督は話しています。
さて、こちらの記事では、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に登場するロケ地をまとめています。(ちょっとしたネタバレあり)
Aquarius Theatre (Nickelodeon on Sunset)
1938年にアール・キャロル・シアターとして開場したこちらの施設(6230 Sunset Blvd, Los Angeles 90028)は、その後ムーラン・ルージュやフラバルー、カレイドスコープなど、様々な名称で知られてきました。1968年、こちらのクラブがサイケデリックなアートで飾られ、アクアリアス・シアターに改名し、長年ブロードウェイの名ミュージカル『ヘア』のL.A.作の舞台を迎え入れました。最近では、ニコロデオン・オン・サンセットとして知られ、1997年から2017年までニコロデオンのライブシリーズの西海岸の舞台となりました。
"Bounty Law" + "The F.B.I." (Puerco Canyon)
タランティーノ監督はリック・ダルトンがキャリアのピーク当時に主演する1950年代のウェスタン・シリーズの「バウンティー・ロー」を観客に提供しています。(実は、『ワンス・アポン・ア・タイム』の準備として、タランティーノ監督が1話あたり30分・計5話の脚本を執筆しており、監督するつもりだったということです。)その後、ダルトン氏が1965年から1974年に放送された「The F.B.I」にゲストスターとして登場しています。American Cinematographer誌によると、そのシーンはマリブのPuerco Canyonで撮影されました。そこで、照明技術者のイアン・キンカイド氏がディカプリオを実際に存在するエピソードに当て込んだと説明しており、そのために、ロケ地、トラックや天気など50年前に撮影されたシーンとぴったり被る必要があったと説明しています。
703エーカーに広がるPuerco CanyonのCameron Nature Preserveは、パシフィック・コースト・ハイウェイのコラル・キャニオン・パークからマリブ・クリーク・ステート・パークまで広がる公園の一部となっており、無数のオーシャン・ビューに加え、ハイカーやバイカーなどに向けたトレールも提供されています。
Casa Vega
ある夜、ダルトン氏とブース氏が1956年にレイことラファエル・ガルシアにオープンされた Casa Vega (13301 Ventura Blvd, Sherman Oaks 91423)でお酒を飲むことに。現在、カサ・ベガはセレブ御用達が集まる人気店で、2代目のオーナーのクリスティーことクリスティーナ・ベガ・フォウラーが特別なリクエストに応じてレストランからこっそり出入りするようにアシストしています。というのも、照明が極力薄暗くなっており、隠れて食事するにはぴったりとなっているのです。60年前のオープン時と変わらず、お客さんが赤い革の席に腰かけ、ベガ・リブアイやカサ・ベガ・モルサヘテなどの名物を味わうことができます。さらに、カンティーナでは多くの種類のマルゲリータが提供され、豊富なテキーラが揃っています。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のオーセンティックな体験を味わうには、C6卓に座れるように依頼し、「ザー・タランティーノ」を注文してみましょう。
Cinerama Dome
パシフィック・シアターのシネラマ・ドーム(6360 W Sunset Blvd, Hollywood 90028) は、1963年11月7日に「おかしなおかしなおかしな世界」の70ミリでのプレミアを記念にオープンしました。それ以来、ドームは50年間以上多くのプレミアとメジャー映画を迎え入れてきました。なお、シネラマ・ドームは1998年12月にロサンゼルスの歴史文化記念物に任命されました。『ワンス・アポン・ア・タイム』のプレミアでは、シアターを1969年5月14日にプレミアが開催された『ジャワの東』をテーマに装飾されました。
2002年3月には、ドームが改装され14スクリーンの高級シアターのアークライト・ハリウッドとして再オープンしました。そこで、サンセット大通りにある伝説的なエントランスやその六角形のパネル、曲線状のスクリーンが元どおりに再現されました。また、ドームには一回の上映で800人も入ることができ、現在も映画好きが好むバルコニー席を備えています。
El Coyote Mexican Cafe
1931年3月にオープンした「El Coyote Mexican Cafe」は1951年に現在のロケーション(7312 Beverly Blvd, Los Angeles 90036)に移転しました。そのカラフルな店構えで何世代ものお客さんが伝統的なメキシコ料理や名物のマルゲリータを味わったことでしょう。片方の壁には、あらゆるハリウッドスターのサイン入り写真が飾っており、クリスマスライトも一年中飾ってあります。
1969年8月8日、シャロン・テート、ジェイ・セブリング、ウォイチェフ・フリコブスキとアビゲイル・フォルガーがEl Coyoteで最後の晩餐をしました。18歳のスティーブン・パレントと共に、彼らはマンソン・ファミリーにベネディクト・キャニオンの10050 Cielo Driveで殺害されてしまいました。その家をテートと当時ヨーロッパを旅していた夫のロマン・ポランスキー監督が借りていました。1992年には、ミュージシャンのトレント・レズナーがその家を借り、録音スタジオとして設けましたが、その翌年に出ることになりました。オーナーのルドルフ・アルトベッリ氏が1994年にその家を取り壊し、代わりにヴィラ・ベラという家を建て、住所を10066 Cielo Driveに変えました。
Fox Bruin Theatre + Fox Village Theatre
UCLAの近くに位置する「Regency Bruin Theatre」(948 Broxton Ave, Los Angeles 90024) は、1937年12月にFox Bruin Theatreとしてオープンしました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、シャロン・テートが「Bruin」に立ち寄り、自分が出演している1969年のディーン・マーティン主演の『破壊部隊』を見にいきます。
こちらのシアターは、ロサンゼルス・シアター、タワー・シアター、ハリウッド・メルローズ・ホテル、マックス・ファクター・ビルディング、フォックス・ウィルシャイア・シアターなどを手掛けている建築家のチャールス・リーがデザインしたものです。「Bruin」は1988年6月にロサンゼルスの歴史文化記念物に任命されました。
Italian Restaurant (Cicada)
ダウンタウンLAにある歴史的なOviatt Building (617 S. Olive St. Los Angeles 90014)にあるアート・デコ・レストランのCicadaは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』だけでなく、他の映画にも登場しています。30年以上は経っているものの、Cicadaが「プリティー・ウーマン」に登場してから未だ「プリティー・ウーマン・レストラン」として知られています。当時はRex Il Ristoranteという店名でしたが、現在もCicadaではジュリア・ロバーツがあの名シーンでエスカルゴを食したテーブルで食事することができます。また、Cicadaは定期的に「Cicada Club」というイベントを開催し、スイングやジャズバンドが演奏する懐かしいメロディーで盛り上がる雰囲気が漂います。
"Lancer" (Western Street - Universal Studios Hollywood)
リック・ダルトンがサム・ワナメーカー監督(ニコラス・ハッモンド)のウェスタンTVシリーズの「ランサー」で、悪役でゲストスターとして登壇する場面があります。撮影中には、ダルトン氏が名演技を残す8歳の子役のジュリア・バッタースと熱心な哲学的な話を交わしています。「ランサー」は実在したシリーズで、1968年〜1970年までCBSで放送され、ワナメーカーがパイロットの「ハイ・ライダーズ」を監督しています。
American Cinematographer誌によると、「ランサー」のシーンはユニバーサル・スタジオ・ハリウッドの裏にあるウェスターン・ストリートのセットで撮影されたと照明技術者のイアン・キンカイド氏は説明しています。
さあ、皆さんはいかがでしたでしょうか?
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をまだ見ていらっしゃらない方も、ロサンゼルス、そしてハリウッドの雰囲気がたっぷり味わえる特集として、次回の後編でも引き続きそれらのロケ地を紹介しています。